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2013年 vol.28

23歳の息子と

ある日のこと、「ちょっと今度時間ある?」と息子からメールが来た。

梅田で待ち合わせをした。
息子はリュックサックを肩に掛け、
赤っぽいネルチェックのシャツとジーンズ姿だった。

近くの小さな焼き鳥店に入り、狭いカウンターに並んで座った。
息子が「お父さんが23歳の時どうしてたん?」と
グラスの中の氷を見つめながら聞いてきた。

「23歳の時か?う〜ん」
店の天井を見上げた。煙が雲のように流れている。

息子は就職し一人暮らしを始めて一年が経っている。

私は「23歳の時は町工場で油にまみれて一生懸命に働いていた。
でもなぁ、このままでいいのか?
働きながら毎日が不安でいっぱいやったな」と言った。

息子は「ふ〜ん。お父さんでも不安なことがあったんや。
そんなとき、どうしてたん?」と聞いてきた。

息子は何を思い悩んでいるのだろう?と思いながら私は
「仲のいい友達が6人いてな。
一緒にいるときが一番楽しくて、休みの日にはいつも遊んでいたなぁ」と言った。

息子は「へ〜っ。いつ頃の友達なん?」と聞いてきた。
「高校の時の仲間や」と私。

「社会人になってからも一緒に?」と息子。
「そうやで。おかしいか?」と訊くと「ううん」と笑顔で横に振った。

「あいつらとは16歳で出会って、今でもつきあいがあるぞ。
ほらっ。大熊のおっちゃん。覚えてるか?」と聞くと、
彼は幼い頃に遊んでもらったことを思い出したようで
「うんうん。覚えてる」と弾んだ声で言った。

「友達はええぞ。大切にしろよ」というと
「オレも中学校の時の友達と会って話すと楽しいわ」と彼は強い口調で答えた。

「そうかそうか」と彼の目を見た。
何かを見つけたように感じた。

気がつけば串入れの器がいっぱいになっている。
私は何もしてやれないし、
ただ見守ってやることだけしかできない。

できることと言えば、
ただこうして経験してきたことを伝えることだけだ。

店を出た。
「また一緒に飲むか!」と声をかけると
「うん」と彼は頷いた。

その日、大阪の夜空に星がたくさん見えた。

 

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